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検死

病理学者の任務は死因を知るだけでは終わりません。 刑事あるいは民事訴訟を引き起こす可能性のある全ての要素を明らかにしなくてはなりません。 とりわけ、細部に注意を払い、計測し、記述し、記録しなくてはなりません。
今日の検視、特に犯罪の可能性のある検視では以前のように終わってから報告を書くのではなく、 検死を進めながら気づいたことを速記者に口述したり、録音したりします。 その録音は法廷での証拠とされることも多いので、完全に正確でなくてはなりません。

ほとんどの検死では次のような10段階の手順で行われます。

1.死体が袋に入って死体置き場に届く。先端(手や足など)は移送中に証拠が失われなようにビニールでくるまれている。 死体の全体的な所見が記述される。身長、体重、全体的な状態、目に見える傷など。次に衣服が取り去られ、助手に渡される。 助手はそれを後の分析の為に袋に入れる。

2.全身を外部から観察する。ここから手に入る情報はその人の生き方を知る為の手がかりが数多く含まれている。 観察は通常、頭と首から始まって、胸部、腹部、上肢、下肢、生殖器へと進む。身体の裏側も同じ手順で観察する。

3.痕跡証拠が収集される。この時、爪の間にあるものが収集される。 性犯罪では、ヴァギナ、直腸、乳房、口といった部位から綿棒標本を集める。綿棒標本は銃撃事件でも大きな意味を持つ。 傷口の周りからとった標本は火薬の残留物を示すことがあり、銃弾が発射された距離を決める助けになる。

4.永久に記録に残すために、一人一人写真を撮る。 傷の大きさが明確になるように定規を傍に置いて写真を撮り、後の論争を防ぐ。

5.Y字切開で肩から胸を通り恥骨まで開く。

6.こうして胸腔と首を見ることができるようになり、皮膚表面からは見えなかった皮下出血も分かる。 首には細心の注意が払われる。人体で最も傷つきやすい部分の一つであり、得られる情報も多いからである。 刺し傷があれば、この段階で傷の性質と深さが明らかになる。

7.胸部の器官を調べる為に、胸骨を切り開く。30歳以下の場合はメスで切るが、それ以上の骨には普通鋸が必要になる。 これで内部の器官が現れ、検査できるようになる。それぞれの機関は保存され、組織学検査に送られる。 秤で主要な器官(心臓、肺、脳、腎臓、肝臓、脾臓)の重さを量る。 甲状腺や副腎といった小さな器官には化学用の天秤が必要になる。

8.頭蓋を調べる為に、頭頂にメスを入れ、前後に切り開いて頭蓋を現す。 (後に縫い合わせれる場合には、縫い目は遺体の頭を載せる枕で隠される。) 軟組織を傷めずに骨だけを切る特別な鋸を使って頭蓋を切り、たがねで頭頂部を取り外す。

9.頭蓋を開けたら慎重に脳を取り出す。頭蓋骨内部からは古い傷痕が分かり、被害者の生活史がうかがえる。 鈍器が使用された場合、骨片が脳膜に損傷を与えている。また、脳自体の表面も損傷を受けている場合もある。

10.検死が終了したら、石灰の手順を逆にたどって死体の外見を整える必要がある 胸骨と肋骨を元に戻し、頭蓋骨と胴体の切開部位は検死のトレードマークとなっている。 「野球ボールスティッチ」で縫合する。体を洗い、葬儀屋に死体を渡す。



監察医という仕事はかなり大変ですね。このような非日常的なグロテスクな作業も、 仕事として毎日こなせば慣れるものなのでしょうか。死体によっては状態も様々でしょう。 人の形をしていないものもあるでしょう。私は本物の死体を見たことがないので分かりませんが直視できないと思います。
人は死んだ瞬間から、法律上は物体という扱いになります。これらの作業からももはや人としての尊厳は死体にはありません。 ですがこれらの行為は事件解決の役に立っているのもまた事実です。